摂食嚥下障害のある在宅要介護高齢者は全国で40万人(要介護高齢者全体の約18%)以上と考えられており、その数は益々増える傾向にあります。 誤嚥性肺炎や窒息などのリスクを抱えながら在宅で過ごす高齢者が今後も増加していくことが予想されるため、在宅での嚥下障害の早期発見と対策が重要です。
高齢者における嚥下障害の主な原因としては、嚥下に関わる筋肉の萎縮・喉の感覚低下・脳神経の障害などが挙げられ、適切な検査・診断と治療方針の検討が必要となります。



 
摂食嚥下とは

「摂食嚥下」とは食べ物を認識して、咀嚼し、口腔から咽頭、食道を経て胃に送り込む一連の流れのことです。
飲み込む動作がうまく出来ない状態を「嚥下障害」といい、食事が取りづらくなるため、「体重が減る」「低栄養や脱水を起こす」「窒息する」などの危険が生じ、また飲み込めなかったものが気管に入り込むことにより「誤嚥性肺炎」の原因にもなります。
嚥下障害の症状はその人の状態によって様々なため、初期の段階では見過ごされてしまうことが多いのが特徴です。



 

正常な嚥下

 

嚥下障害による誤嚥

 
     
         

正常な嚥下

 

嚥下障害による誤嚥

 

嚥下障害の症状

■食事中や食後しばらくして、よく咳き込む
うまく飲み込めなかった食べ物や唾液が気管に落ちてしまうことがあります。特に水やパサパサした食べ物は誤嚥(気管内への誤入)しやすい傾向があります。食事中や食後しばらくしてからよく咳き込む場合は注意が必要です。

■唾液が垂れる
唾液は1日に1〜1.5リットルほど分泌されます。
嚥下機能が低下していると飲み込めなかった唾液が口の中に溜まってしまい、口から垂れ流れ出ることがあります。

■声が出しにくい
喉にうまく飲み込めなかった食べ物や唾液が溜まっていると、痰が絡んだようなガラガラ声になることがあります。
また鼻に抜けるような声やかすれ声なども、喉の動きの悪さが原因の可能性があります。

■食事を残すことが多い、体重が減る
摂食嚥下機能が低下すると硬いものが食べにくくなり、飲み込むのに苦労するため食事時間が長くなる傾向にあります。
食事時間の延長は疲労を招き、食べる意欲の低下につながるため、必要なエネルギーや栄養素を摂取できなくなります。
その結果、低栄養状態になり体重減少を招くことがあります。

■薬が飲みにくい
口の中で散らばる散剤や顆粒剤や、口の粘膜に張り付きやすいカプセルは特に飲みにくい剤型です。
また大きな錠剤なども喉に残ることがあるため、嚥下機能が低下している場合には薬の剤型の変更やゼリーなどの滑らかな食品の併用など工夫が必要です。

嚥下障害の原因

■形態・解剖的(器質的)な原因
口腔から胃までの食べ物の通過過程で、各器官に構造上の問題がある場合です。
歯周病・歯の欠損・口内炎・口腔がん・咽頭がん・口腔咽頭部の良性腫瘍・外からの圧迫(頸椎症など)のほか、口蓋裂や顎の形成不全など先天的(生まれつき)のものなどがあります。

■機能的な原因
器官の構造そのものには問題がなく、神経や筋肉の異常により嚥下運動に問題がある場合です。
脳血管障害・頭部外傷・脳腫瘍・パーキンソン病などによる神経・筋系の障害に起因するものや、生理的な加齢現象によるもの、薬剤の影響によるものなどがあります。

■心理的な原因
うつ病、拒食、認知症などが原因で嚥下障害が生じることがあります。

高齢者における嚥下障害の原因としては、嚥下に関わる筋肉の萎縮・喉の感覚低下・脳神経の障害など「機能的な原因」が多く挙げられます。

嚥下障害が招く誤嚥性肺炎

■誤嚥性肺炎とは
水分や食べ物、胃の逆流物が誤って気管に入ってしまうことを「誤嚥」といい、誤嚥により肺の中で細菌が繁殖して炎症を起こすことで生じるのが「誤嚥性肺炎」です。
高齢者の肺炎の7割以上が誤嚥に関係していると言われており、気付かないうちに誤嚥性肺炎が発症してしまい、入退院を繰り返しながら徐々に体力が落ちていくケースが非常に多い現状があります。嚥下障害が招く誤嚥性肺炎は、高齢者の死亡原因として多くの割合を占める疾患です。

■誤嚥性肺炎の症状
標準的な症状として発熱・咳込み・痰の排出のほか、倦怠感・呼吸困難などがあります。
高齢者の場合、病状が進んでから症状が表に出てくる場合がありますので、飲み込みに不安が生じた場合には定期的な嚥下機能のチェックが必要です。

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